祭事

国指定文化財

国 宝

梅蒔絵手箱

解説

北条政子奉納と伝える蒔絵手箱。鎌倉時代の漆工芸品を代表する優品で、入念に漆を塗り重ね、金粉を濃密に蒔きつける沃懸地(いかけじ)の技法により豪華に仕上げられています。蒔絵の基本技法(平蒔絵・研出蒔絵・高蒔絵)の完成を示す作品としても知られます。

本体の手箱の他、鏡・鏡箱・白粉箱・歯黒箱・薫物箱・螺鈿櫛・銀軸紅筆・銀挟など化粧道具がほぼ揃った最古の遺品として、風俗史上も貴重です。蓋表には、梅の老木や几帳や群遊ぶ雁をあらわし、銀の薄板によって「榮・傳・錦・帳・雁・行」の文字が配されています。これは、唐の詩人白居易が、友と共に昇進を遂げた慶びを詠った次の漢詩の一節によった文学的な意匠です。

雁は錦帳を伝え、花は萼を連ねたり、
彩は綾袍を動かし、雁は行を趁う、

こうしたデザインは、葦手(あしで)ないしは歌絵とよばれる表現法で、和歌や漢詩の文字の一部が象徴的に配され、それらの一場面が暗示されているのです。模様とともに断片的に配された文字を読み解くことで、意匠に隠された文学的表現が読みとれるようになっているのです。この葦手意匠の作品としても、初期の作例として貴重なものです。

※北条政子:鎌倉幕府を開いた源頼朝の室。頼朝死後は尼将軍と称せられ、政局運営に手腕を発揮した。

 

近年の展示履歴

※保存のため、当館以外の施設も含め、数年に1度の展示となります。展示情報をご確認下さい。
なお、本年度は当館での展示を予定しておりません。
東京国立博物館に寄託中ですので、そちらで展示を行う場合もあります。

 

現在「梅蒔絵手箱」の模造復元品を展示中!

復元品とはいえ、当時の技法、材料を含め、全てを再現をすることを目指したもので、国内でも数少ない学術的な復元品として、一見の価値があります。研究者・ 伝統工芸作家・工人ら18名がこの復元行程に参加し、3年半の歳月をかけ完成させたものです。また、展示室内では、この復元過程のメイキングビデオを見ることができます。